羽田空港からの発着便が増えていかないワケ

羽田空港からの発着便が増えていかないワケ

2015年2月1日に1989年の就航から25年にわたって東京とロンドンを結んできた英ヴァージン・アトランティック航空が日本から撤退しました。

航空会社の路線撤退は、決して珍しいことではなく、その理由も市場戦略の見直しや需要減による収益悪化など、各社様々です。ヴァージン・アトランティック航空は日本からの撤退について「デルタ航空との共同路線拡大」などを理由に挙げました。

しかし今回のヴァージンの決断は背景にあると噂される「成田縛り」の問題を浮き彫りにしました。

「成田縛り」とは何か

成田縛りとは、成田に発着枠を持つ航空会社に対して、国土交通省が「羽田に国際線を新しく就航させる場合は、成田の発着便も残すように」と行政指導を行うことを指します。

こちらは法的根拠がないものの航空会社にとっては実質的に“政府命令”と解釈されてきたした。一体なぜこうした行政指導を政府は行うのでしょうか?

 政府が「成田縛り」を指導する理由

①成田周辺の住民のため

成田空港は1978年5月に地元で生活していた住民を強制的に立ち退かせて建設した空港です。当時は反対派の運動は絶えず、トラブルを繰り返してきました。

しかし、日本人の海外旅行が一般化し、成田から海外へ出る利用者が増えるにしたがって、反対派の声も少しずつ弱まっていき、現在は世界約40の国・地域の約100都市とつながる日本の空の玄関口として発展を遂げました。

しかしこうして発展できたのは、「国内線は羽田、国際線は成田」というすみ分けができていたからこそです。

そんな中、羽田が再び国際化され2020年の東京五輪を目指して昼間の枠もどんどん航空会社に与えられはじめています。そうなると、ビジネス需要を取りこめて収益性の高い羽田に航空会社が路線をシフトしていくのは当然の流れです。

そんな状況を、過去の歴史に目をつむって国の政策に泣く泣く賛成してきた成田周辺の住民は我慢できるわけがない。そこで始まったのが、行政指導による成田縛りです。

②自分たちのため

もう一つは航空会社に対して自由に路線の申請を許してしまうと、便利な羽田空港に路線が集中してしまい、成田空港を存続させることができなくなってしまうからです。

成田空港を運営する成田国際空港株式会社は政府が株式を所有する国有企業で、多くの公務員が天下っています。また、空港の整備業務や空港ビル内に入居する店舗など、経済的な波及効果も少なくありません。このため、成田空港が存続できなくなると、様々なところに影響が出てしまいます。

しかし航空会社にしてみると、採算性の悪い成田便を残したまま羽田便を新設しても、日本路線全体としての利益は薄くなります。

その結果、一部の航空会社は、日本路線そのものから撤退した方が得策と判断したものと考えられます。ヴァージン航空は、デルタ航空との共同路線拡大を理由としてますが、「成田縛り」も大きな要因になっていることはほぼ間違いありません。

ある米国系大手の幹部は「成田と羽田の両方から飛ばしているが、本当はもう成田には興味がない」とまで言い切っています。

日本にいるとあまり実感しませんが、ここ20年の間に世界の航空輸送の市場は驚異的なペースで拡大しています。飛行機の旅客数は、北米が約2倍、欧州が 約3倍、アジアは約4倍に増加しました。

これに対して日本の旅客数は、同じ期間で横ばいという状況であり、相対的に見れば、日本の航空輸送の規模は3分の 1の水準に低下してしまったことになります。日本の空のガラパゴス化はさらに顕著になっているようです。